< 数 学 の 学 習 法 > 数学担当講師 平河修三
数学の学習は論理の学習でもありますので、説明を受けた直後には「なるほど」とわかった気になりがちです。しかし、いざ取り組んでみると解けない・・・そんなことが起こりやすい科目でもあります。ですから、「わかった」という感覚をうかつに信じないでください。「出来なかったことを出来るようにすること」・・・勉強の目的はこれに尽きます。自分の実力は実際にペンを動かし「解けるかどうか」で判断しましょう。
「解く力」を養う上で、最初から完全な理解を目指して「じっくり1つ1つ仕上げる」というのは、お勧めできない方法です。「2度塗り、3度塗り」をしていく中で、受験に対応できる実力を身につけましょう。苦手な単元であれば、最初は5割程度の理解でも構いません。とにかく夏までに一通りの単元に目を通し、自分の「学力地図」を把握することが重要です。そこから「夏に2周目、秋に3周目、直前期に苦手単元をもう1周」と上塗りを重ねていきましょう。テニスの練習をするときに「サーブがよくないと試合が始まらないからまずサーブを仕上げよう」といってサーブばかりじっくり練習したりしませんよね。そんなことしていたら試合技術は向上しませんし、つまらなくてやる気も起きませんし、何よりサーブの「仕上がる」日が来る保証はないのです。まず一通りやってみて、「2度塗り、3度塗り」の過程を通じて全体的に底上げしていく…受験勉強とはそういうものです。
学習初期の段階にある受験生に対して1つアドバイスをするとすれば、「対策出来ない計算ミスはない」ということです。計算ミスは大雑把に「計算ミス」と扱わないでください。計算ミスとは、あってはならない「事故」です。交通機関で事故が発生したときには、徹底的に原因を追及して対策をとります。これは受験勉強においても同様です。「移項の際に符号を間違えた」、「両辺を4倍するときにある項だけそのままにしていた」のように、まずはミスを言語化しましょう。すると、自分がある特定のミスを繰り返していたことに気づくはずです。次は、その原因を自分の癖の中に見つけてください。能力以上の暗算をしてしまう人、「+、-の符号」や「分数の計算」を雑に筆記してしまう人、文字式の計算を整理しないまま進めてしまう人・・・そうした自分の「危険な癖」を見つけましょう。最初から「危険を冒さない」ことが何よりも大切です。
単 元 ご と の 学 習 法
図形は図を見て説明できるかどうか
図形問題は「図がいのち」です。もちろんたくさんの公式を覚えることも必要ですが、それらはすべて図で説明のつくことばかりです。図形は式や言葉以上に図で情報が与えられます。ですから式や言葉を介さずに図の中でその情報を直接やりとりする訓練が必要なのです。
たとえば、余弦定理や正弦定理の「公式」を覚える必要はありません。図を見て指差しながら「これがこれと等しい」と言えればいいし、反対に、それがすらすら言えなければダメです。その人の図形の実力を見抜くことは簡単です。「さあこの図から言えること全部言ってごらん」…そこでどれだけのことが言える
かどうかで測れます。端的にいえば図形の実力とは、目の前の図についてたくさん説明できる能力に等しいのです。
場合の数・確率は「違い」を知ること
「受験はコツコツ勉強することが大切」…それはその通りです。しかし、場合の数や確率は毎日1問ずつ勉強していっても上達しません。これらの単元は「問題の識別」が大切だからです。まとめてたくさんの問題をやって、「このタイプの問題はこうだが、このタイプの問題はこう」という風に「違い」を意識していくことが必要です。
また、言葉から情報が与えられることも特徴ですので、「少なくとも一人男子が選ばれる」⇒「女子ばかり選んではダメってことだな」といった翻訳の訓練をしておかなければ式に辿り着けません。問題文を翻訳してパターンを見抜く・・・ここまでが重要で、計算に入ったときには勝負がすでについている単元なのです。
関数はグラフがすべて
2次関数をはじめ関数の勉強はグラフがすべてといっても過言ではありません。式からグラフへ、グラフから式へ自由自在に行き来する訓練が基礎になります。そして問題を解くときに一番大事な部分はグラフの上に現れます。式をいくら見てもわからないことが、グラフを見れば一発でわかる…入試ではそうした問題が好んで出題されます。
関数というのは「原因xと結果yの関係を表したもの」ですので、たくさん文字が出てきたときには「何が原因なのか、何が結果なのか」といったことを整理する習慣をつけておきましょう。
まとめると、図形は図の翻訳、場合の数・確率は言葉の翻訳、関数はグラフの翻訳が大切です。そうした各単元の特徴を意識した勉強をしていきましょう